イタリアのカーデザインメーカー「ピニンファリーナ」のコンセプトカーのデザイン過程のドキュメンタリー。一般的にクルマの新デザインは企業のトップシークレットであるから、カメラが潜入するということ自体驚きだ。
デザインの発想方法がとても興味深かった。近年、車はCO2を排出する代表的な機械としてマイナスのイメージが付いている。それを受けてカーデザインも人にやさしいとか環境にやさしいというのがテーマの主流になっている。デザインも丸みを帯びたやさしいデザインが多い。ところが
ピニンファリーナはあえてその流行に反旗をひるがえし、独自の路線を取る。それは憧れやかっこいいマシン-かつてのスーパーカーのように-というクルマの楽しみの原点にもどったデザインに重点を置く。
当然、流行に反したデザインにチャレンジするにはそれを認めさせるだけの強烈なインパクトのあるものが求められる。何度もエスキスを重ねるわけだが、チーフの奥山氏が的確にデザインの欠点を見抜き、デザイナーに修正を要求する。アートディレクターってこういうことなんだと納得。
この番組を見て、ちょっと乱暴な推測だけど、デザインの歴史も繰り返すのかなって思った。機能を重視するデザインの潮流と、感覚を重視するデザインの潮流の繰り返しである。クルマの場合、スーパーカーブームのころのかっこいいクルマは意外と空力性能や使い勝手が悪いものがあったりする。今のクルマはさっき書いたようにどちらかというとテクノロジーが大きくデザインに影響している。建築も(建築はとくに建築史の研究があるのでデザインの変化はしっかり分析されている)19世紀から数回デザインの潮流が繰り返されているような気がする。
話はかわって、ピニンファリーナの戦略はランチェスター的というか、なにがなんでもデザインでは一番をめざすという的を絞った戦略が功を際していると思う。ハイブリッド車でもなく、とにかくかっこよく、速いクルマ。イタリアの企業ってこういう割り切りがすごくうまい。たとえば、どんなに安い中国産の靴が流通しても、フェラガモはびくともしない。なぜならフェラガモと中国産の激安スニーカーは戦う市場の土俵が違うから。こういう安売り競争に参入せずに生き残れる企業は強いよな。やっぱり。
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